夏休みのうちに

 うちの研究室は今週いっぱい、夏休み。今のうちに、論文のリバイズなどもろもろ片づけよう。昨日と今日で2つ片づけた。明日中にもう一つ片づける。書くべき論文も3つある。うち一つ、科研までにアクセプトが欲しい。間に合うのか?急ごう!
 昨日は医学部の共同研究者の方に樹状細胞の取り出しと培養について、ご教示いただいた。細胞生物学の操作には化学者の目から見て、面白いことがごろごろしているように思う。こういうところから筋の良いシーズを拾い上げるられるかどうかが、腕の見せ所であるなあ。

高木先生追悼講演会

先々代の教授である高木誠先生の追悼講演会に参加してきた。僕は高木先生の講義に魅せられて研究室に配属された。高木先生は安住することを嫌い、テーマをどんどん変えてこられた方である。先見性があったのに、分野として認知される前に、次のテーマに移って行った方だ。アルカリ金属の比色試薬、表面鋳型ポリマー、DNA検出、いずれも先駆的な仕事をなされ、今ではそれぞれが大きな分野に育っている。なんともったないないことだと僕は思う。だけど、高木先生、そしてその教えをまさに受け継いでいらっしゃる今の上司の片山先生を教えを通じて、新しい分野に挑戦し続けなければ(常に自身を磨き続けなければ)ならないと、本来的には保守的な自分も思うようになってきた。教育が思想の形成に与える影響はとても大きい。教育とは憧れであると斎藤隆さんも、益川敏英先生もおっしゃっていた。憧れる気持ちに従い、背伸びをし続けよう。

研究を競争に勝つためにやっている、東北大総長の二重投稿

 私の仕事に対するモチベーションは人の役に立ちたいとか、人類共通の知としてのサイエンスの進歩のためとか、高尚なものはあるが、競争に勝ちたいという個人的なものが一番大きい。高尚であらねばならないと考えると、体が動かなくなる。
 東北大の井上総長が二重投稿とのこと。報道によれば会議論文(プロシーディング)に掲載したのと同じものを、一流雑誌にも掲載させたとのこと。実は同様の事例を私の分野でも見たことがあり、それほど珍しいことではないと思う。こんなことをやってもそのときは幸せかもしれないが、いつかばれるかもしれないし、表には出なくても研究者の間でそういう噂は伝わるものである。研究者として、後世に対して正しい情報を伝えていかねばならないのに。

分子生物学はサッカーde化学は野球

 12月7〜9日と分子生物学会・生化学会にはじめて参加してきた。自身の研究に生かせるような基礎研究の最近の成果を学ぶためである。そこで感じたのは、この学会は世界とつながっているということだ。英語のセッションがあるのに驚いたし、これならば海外の研究者を呼んでも疎外感が少ないだろう。僕が参加してきた化学やバイオマテリアル系の学会は、それぞれの国で完結しているように見えるのに比べ、この学会はサッカーのようにグローバルに見え、うらやましく思った。化学系にいても、グローバルな視点で自分の実力を評価したいものだ。

分野を変えるの楽しさ

 最近、自身の研究に関する勉強が楽しい。分子生物学の基礎知識が出来上がってきて、ようやくそれらを自分の研究と関連づけてアイデアを出せるようになったからだろう。すでに今の研究室に着任して5年、「遅いちゅうねん!」という突っ込みが入りそうだ。僕のように一つの分野を曲がりなりにも修めてしまった後で、その分野(高分子科学)の考え方は置いておいて、新しい分野(バイオテクノロジー、バイオマテリアル)の考え方に染まるのは、ゼロからはじめるより時間がかかるんだ、きっと!(と思って自身を納得させる)
これから自分の世界が広がる予感がしてとても楽しい。

勉強の仕方

 野口悠紀夫氏の超勉強法をはじめ、広く受け入れられた勉強のハウツーものがある。これまでハウツーものへの反発心からまじめには読んでこなかった。考えてみれば、一流の学者の勉強法はためになるところがきっとあるはずである。また、その勉強法は、自分に合うように改良するであろうから、創造への欲求もある程度は満たされ、自分のプライドも保てると思う。
 ハウツーものへの反発心は、オリジナル信仰に基づく。オリジナル信仰などは笑止と日ごろ思いつつも、実は自身がいまだそれにとらわれていた。

今敏さん逝く

 これまであまり知名度はなかったが、ポスト・ジブリにおいては、間違いなく日本でもっとも有名な監督になったであろう今敏さんががんで亡くなったことを今日、知った。氏のブログで「さよなら」と題された遺言を涙をこらえつつ読んだ。抗がん剤による治療をせず、自宅での緩和ケアを選び、奥様や大事な友人たちとの最後の時間をいつくしむ様子がつづられている。自分も癌になったらこのように死にたいと思った。46歳での若すぎる死。次回作はかなりのところまで進んでいたと聞く。さぞかし無念だったことだろう。一ファンとして今後、氏の作品が見られないのはとても残念だし、ブログを愛読していたので氏のことを身近に感じており、少なからずショックを受けた。
 夢と現実の錯綜する世界を描いた一連の作品が好きだ。しかし一番すきなのはユーモアとペーソスにあふれた味わい深い「東京ゴッドファザー」だ。ブログには作品を作り上げる過程が丁寧に説明されていて興味深く読んできた。分野は異なれど、創造する職種の人間として影響を受けた。日常生活では創造性を刺激するものを貪欲に取り込み、作品作りにおいてはすごく恵まれているとはいえない環境であるものの、それを制限とは感じずむしろ工夫によって創造に結び付ける賢さを持ち、論理的かつ緻密に作品を作り上げる姿にはたいへん刺激を受けた。ご冥福をお祈りします。